加害者の人権
被疑者の人権
被告人の人権

について、考えたい、と思います。

これらについて、誤解があるのかな、と思います。 

・この4つの立場の人の意味、
・人権、という言葉の意味、
・民法と刑法の違い(目的と機能)


まず、言葉の意味を一つずつ。

人権」は、「あらゆる人に平等に認められた権利の総称(すべての呼び名(つまり人権はたくさんある))」です。
国家と国民・人民の関係で、国家権力が人権を侵害するのを防ぐ目的で、憲法が作られました。
人権には、国家がおせっかいをしない義務を定めたもの(自由権など)と、国家がする義務を定めたもの(社会権など)があります。


国民と国民の間でも、一応人権侵害の問題は起こりますが、
1.民事で、契約が無効(民法90条)
2.民事で、損害賠償請求など(民法415条、709条)
3.刑事で、犯罪となる。

となります。

1と2の民事は、加害者と被害者の問題。
3の     刑事は、国家 と加害者の問題。(国家が加害者を罰するという問題)



被疑者」とは、「検察官に起訴される前の、捜査機関(警察など)に疑われている人」
のことをいいます。
(容疑者は法律用語ではありません)
被告人」とは、「検察官に起訴された、刑事訴訟の当事者」です。

無罪の推定」といいまして、有罪判決が確定するまでは、被疑者・被告人は無罪の人(善良な(とは限りませんが)一市民)として扱われなくてはいけません。
そして、「有罪だということを検察側が証明する」ということをしないと、無罪にしなければなりません。

だって、これを読んでるあなた、たまたま運悪く警察に疑われて、犯人じゃないのに犯人みたいに扱われて、そして、自分の潔白を証明しろ、って言われて、有罪になったら、いやでしょう?

ただ、そうはいっても、有罪だっていう絶対の確信を最初から持てるんであれば、裁判なんかいらないし、
反対に、有罪の確信が無いんだったら、強制捜査をまったくしちゃいけない、って言われちゃったら、犯人に逃げられたり証拠隠滅されたり、証拠を探し当てられなかったりします。

ですから、被疑者・被告人の人権と、真実を発見する目的、と、天秤にかけて、バランスをとっているのが、刑事訴訟法なのです。日本の憲法にもかなり詳しい条文が有ります。



さて、

被害者の人権と、死刑の話

に戻ります。

まず、確認しておきたいのは「被害者の人権と加害者の人権とを比べてバランスを考えるということ」意味が不明、ということです。
後で詳しくいいます。

そして、さらに、被疑者・被告人の人権と比べるのは、意味が無いどころか、絶対におかしい。
被疑者・被告人は、あくまでも、無罪の人として扱われる存在ですから。
法律家でもこういう言葉遣いをする人がいますが、頭がおかしい、と言って良いレベルでしょう。

では、あらためて、

被害者の人権と加害者の人権

の話に戻ります。

刑罰を科すことで、被害者は救われません。

できることで考えられるのは、
・民事の賠償をきちんと受けられるようにすること(死刑執行したら不可能になることです)
・国家が補償すること(制度はあります。改善の余地もあります。)
・精神的なケアなどをすること

もともと、凶悪犯罪に限らず、犯罪に限らず、労働問題も交通事故も、責任を負うべき者が責任を負って損害賠償をしたりなど、被害者との崩れたバランスを戻す(戻そうとする)のは、民法の担当です。
刑法は、それとは別に、犯罪を防ぐために、国家が違法行為をした者を処罰することを担当。

民法と刑法では、目的も機能も全然違います。



救われるということを強調する人が言うことは、
結局、
1.報復感情を満たすこと。
2.殺したら、殺せ。(絶対的応報刑)
両方とも、現在の刑法学理論からは、刑法、刑罰の役割として認めていません。
(結果として、そういう機能が果たされているという見方はあるでしょう。)
ですから、この2点を言う人は、まず、刑法学の基本から論証しなければいけません。


死刑廃止論に対する存置論者=被害者の利益を代弁、という構図を、作る連中は、
・本当に、心底から被害者や被害者遺族のことを考えず
・問題を被害者のことにすりかえて、存置論を正当化しようとしている

裏返して言えば、
存置論を主張するために、被害者や被害者遺族を利用している。


そもそも
死刑廃止をした国の、国会議員の多く(廃止に賛成)は、被害者の人権を考えていないひどい人たちなの?
国連は、主導して、人権条約としての多国間条約、死刑廃止条約を作りましたが(日本は批准していない)、被害者の人権を考えない、トンデモな大馬鹿たれの悪人どもなの?
去年、死刑廃止すべきと言い始めた、ローマ法王(フランシスコ)も、大馬鹿たれなの?

よろしければ、先日書きました、「死刑廃止論」という投稿で、死刑廃止論の理論的なことを最小限(でも長いけど)に、わかりやすくまとめましたので、お読みください。
死刑廃止論全般について先日書いた投稿