今年は、1月11日が成人の日でした。ハッピーマンデー(昔決まってた祝日の日付を常に月曜日にしてしまう)おそるべし。ハッピーマンデーについては、祝日について書いた投稿を参考にして下さい。
1月11日は、自分の誕生日なので、つい期間計算の話を書いてしまいましたが、
18歳から選挙ができることになった今、とてもホットな話題である「成人」について書きませんと。
まず、一般用語で、「成人」とは、心身が十分に成長した人、のことです。
次に、法律で、成人とか成年とは何か、です。
憲法にも法律にも出てきますが、法律によって、違います。
まず、民法から。
普通に、成年か未成年かが、問題になるのは、民法です。
民法 第一編 総則 第二章 人 第二節 行為能力
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(成年)
第四条 年齢二十歳をもって、成年とする。
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普通は、20歳からですね。外国は21歳がすごく多いです。
法人って団体のこと?でも書きましたが、生まれたら、人間は人(民法でいう人)なので、権利や義務が有ったりできます(権利能力っていいます)。
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第二章 人
第一節 権利能力
第三条 私権の享有は、出生に始まる。
2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
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でも、未成年だと保護者(親権者や未成年後見人)の同意が無いと、ローンを組んだりできませんよね?(条文には法定代理人って書いてありますね。)
この自分で権利を得たり義務を負ったりするようにすることを法律行為(契約など)というんですが、これを一人前にできないんです。(行為能力が制限されています)
「なんでか」って言いますと、子供はおバカなので(賢い未成年の方すみません)、 自分の財産などについて、おバカ(たびたびすみません。)なことをやっちゃって、本人が困るからです。
ちなみに未成年が成年と違った扱いを受けるのは、「未成年を守るため」 がほとんどです。
未成年より大人が偉いというわけでは、全然ありません。
他の投稿にも書きました。
生徒の政治活動。子供の人権は大人と違うのか
5条と6条に原則と例外が書いてあります。
さらっと読んで下さい。
6条は、未成年が商売をやっていいって言われた場合の話です。
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(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(未成年者の営業の許可)
第六条 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
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民法で、未成年でも結婚できるって書いてありますよね。親の許しが必要ですけど。
第四編 親族 第二章 婚姻 第一節 婚姻の成立 第一款 婚姻の要件
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(婚姻適齢)
第七百三十一条 男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。
(未成年者の婚姻についての父母の同意)
第七百三十七条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
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結婚できるのは良いにしても、所帯持ちが、いちいち親に聞かないと、いろいろできないんでは、まともに家庭生活ができないですよね?
ですから、民法では成年になってしまうんです。
第二節 婚姻の効力
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(婚姻による成年擬制)
第七百五十三条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
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「みなす」っていうのは、法律用語で、本当は違うんだけども、そうしちゃう、っていう意味です。
見出しに書いてある「擬制」も同じ意味です。
民法では、他に、不法行為の場合がありますが、後回しにします。
憲法です。いよいよ選挙権の話です。
第三章 国民の権利及び義務 第15条2項ですね。
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公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
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「成年者って書いてあるから、民法の原則通り、20歳だ」っていうのは、大きな間違いなのです。
憲法は最高法規です。民法より上なのです。だから、民法を基準に憲法を解釈することはやっちゃだめなのです。
じゃあ、何歳か。
国会が法律で決めて良いのです。なので、民法とリンクしません。
第四章 国会 第44条です。
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両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
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これを決めた法律が、公職選挙法です。
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第二章 選挙権及び被選挙権
(選挙権)
第九条 日本国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。
2 日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
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3項から5項は省略。年齢とか関係無い条文なので。
改正前の条文です。
今までは20歳以上だったのが、最近、18歳以上になったのです。
条文の1項と2項それぞれ、「二十」の所が、「十八」になります。
今年、平成28年(2016年)6月19日から、新しい条文がスタートします(施行)。
総務省のページに詳しく書いてあります。
あと、選挙人名簿に登録してもらう資格についての条文も改正です。
この18歳選挙権を決める議論の中、民法や少年法なども合わせるべきだ、っていうことを言った人が結構多くいたらしいのですが、結局、選挙権だけになりました。
法律の目的が違うのですから、そろえる必要は、全然無いのです。
実際、海外では、かなり多くの国が、選挙権は18から、民法では21から、としています。
被選挙権(選挙される権利、立候補できるってこと)の話は、もうちょっと上の歳(25とか30)からになっています。
次は、公営ギャンブルです。
競馬法、自転車競技法、小型自動車競走法、モーターボート競走法
どの法律も、条文に、「未成年者」は、馬券などを、買ったり、もらったりしてはだめ、って書いてあります。
この場合の未成年は、民法の未成年と同じなので、結婚していれば、馬券を買ったりしてもOKです。
次に、たばこと酒です。
たばこは、未成年者喫煙禁止法は、満20歳未満は、だめ、と書いてあります。
お酒も、未成年者飲酒禁止法で、同じ書き方をしています。
両方の法律とも、題名は「未成年」と書いていますが、条文では、年齢で書いています。
結婚してても、だめなのですね。(法律の趣旨からしたら当然ですね)
古い法律ですし、未成年者に禁ずる書き方ですが、目的は未成年者の保護です。若い人の飲酒喫煙は身体に悪いとかが理由です。
だから、未成年者に罰則は有りません。
ちなみに、飲ませた人とかには罰則が有ります。
次は風俗店です。エッチな店だけでなく、普通のキャバクラとか、麻雀屋、パチンコ屋とかもですよ。
風営法とか、風俗営業法、って略されている法律です。こういう長い名前って官僚の趣味としか思えん。だって、こんな長いのだれも使わないから知らないもん。
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(年少者の立入禁止の表示)
第十八条 風俗営業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、十八歳未満の者がその営業所に立ち入つてはならない旨(第二条第一項第八号の営業に係る営業所にあつては、午後十時以後の時間において立ち入つてはならない旨(第二十二条第五号の規定に基づく都道府県の条例で、十八歳以下の条例で定める年齢に満たない者につき、午後十時前の時を定めたときは、その者についてはその時以後の時間において立ち入つてはならない旨))を営業所の入り口に表示しなければならない。
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18歳からOK。18歳未満はだめ、という書き方です。
これも、年齢で決まっているんですね。
出入り禁止の貼り紙がはられちゃいます。
フーゾク、っていうと、エッチな店だと思う人がけっこういます。または風営法の店全般とか。
風俗という言葉は「一つの時代とか、一つの社会とかの、人の生活の様式、風習」のことで、みんなが、どんな家に住んで、何を着て、何を食べるか、っていう話です。
次は、さっき後回しにした、民法の不法行為の場合です。
うっかり他人の物を壊しちゃったとか、車で人をひいちゃった、とか、人を殴って怪我させちゃったとか、そういう場合に、被害者に損害を賠償しないといけません。大人は。
第三編 債権
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第五章 不法行為
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
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でも、たとえば、4歳の子供に、他人の物を壊したお前が悪い、弁償しろ、って言っても、かわいそうだし、お金を持ってないし。
そもそも、親がちゃんと見ていなかったの?って話ですよね?
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(責任能力)
第七百十二条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
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自分がやっていることをわかっているかどうか、っていう話です。
一律に年齢が決まっているわけではないのです。
ケースバイケースです。
子供が払わない場合は保護者が払うことになります。
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(責任無能力者の監督義務者等の責任)
第七百十四条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
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次は、刑法です。
犯罪を犯すと刑罰を課されます。
でも、民法の場合と同じで、3歳児が近所の子を殴って怪我をさせたから傷害罪で懲役とか罰金って、おかしいでしょう?
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(責任年齢)
第四十一条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
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民法の不法行為と違って、一律です。
子供によって成長が違うし、そもそも刑罰以外の方法で対処したほうが良いからです。
(民法709条は被害者がお金をもらえないと意味が無いのですが、刑罰を課す課さないは被害者の損得に関係無いのです。)
少年法は、この方針で、さらに対象を広げています。
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(少年、成人、保護者)
第二条 この法律で「少年」とは、二十歳に満たない者をいい、「成人」とは、満二十歳以上の者をいう。
2 この法律で「保護者」とは、少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。
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20歳未満は「少年」(少女でも少年)
全部、家庭裁判所に送られます。
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(司法警察員の送致)
第四十一条 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
(検察官の送致)
第四十二条 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第四十五条第五号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
2 前項の場合においては、刑事訴訟法の規定に基づく裁判官による被疑者についての弁護人の選任は、その効力を失う。
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家庭裁判所が、調査やって少年審判をやって、保護処分(保護観察,少年院送致,児童自立支援施設等送致)っていうのが原則です。
家庭裁判所が、刑事裁判が良いと思えば、検察官に送られて、起訴されると、普通の刑事裁判になります。(逆送)
(送致のときに16歳以上でないと、検察官に送致できませんが)
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(検察官への送致)
第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
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刑事裁判になって、懲役刑とか禁錮刑になったとき、刑務所に入ることになります。
この場合、男子の少年は、少年刑務所に入ります。
少年刑務所は、刑務所の一種で、少年用に作った刑務所です。少年でない若い受刑者も多いそうです。中で分けていますが。
女子の少年刑務所は無いそうです。
間違えている人がいるかも知れませんが、少年院と少年刑務所は違います。
少年院は少年法の保護処分の一つ。少年刑務所は、懲役刑や禁錮刑を受ける少年用のもの。
刑事裁判になって有罪になったときでも、犯罪時18歳未満の少年の場合、重い刑罰は、軽くなります。
死刑→無期。
無期→10年以上20年以下の有期懲役、有期禁錮
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(死刑と無期刑の緩和)
第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。
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また、懲役刑になる場合、少し範囲を決めて刑期をピッタリ決めないようにします(相対的不定期刑)。その少年の状態に臨機応変に合わせるためです。全然決めないとかわいそうなので、限度があるのです。
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(不定期刑)
第五十二条 少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、処断すべき刑の範囲内において、長期を定めるとともに、長期の二分の一(長期が十年を下回るときは、長期から五年を減じた期間。次項において同じ。)を下回らない範囲内において短期を定めて、これを言い渡す。この場合において、長期は十五年、短期は十年を超えることはできない。
2 前項の短期については、同項の規定にかかわらず、少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、処断すべき刑の短期の二分の一を下回らず、かつ、長期の二分の一を下回らない範囲内において、これを定めることができる。この場合においては、刑法第十四条第二項 の規定を準用する。
3 刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、これを適用しない。
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20歳未満は「少年」として違った扱いをしているのは、分かったけれども、
頭の良い人は、14歳未満の子供、たとえば、12歳の子供が、殺人をした場合、その子供を放っておくのか?って思いますよね?
昔、そういうドラマを見た記憶が有ります。
殺人犯の子供が遊んでるのを見て、今の法律では何もできないんですよ、と話している場面で終わります。私も子供でしたが、そんなことあるの?と思いました。
そんなわけないでしょう?
そのドラマを作った人はどんだけあほなんだ?放送局も。
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第二章 少年の保護事件
第一節 通則
(審判に付すべき少年)
第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
2 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。
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さっきまでの話は、第3条の第1項1号です。
14歳未満の子供は、2号に当たります。触法少年といいます。
2項にあるように、いったんは、児童相談所などに預けることになっていて、児童相談所などから家庭裁判所に送られてくると、少年審判になります。そして、保護処分(保護観察,少年院送致,児童自立支援施設等送致)になるかもしれません。
1項3号に書いてあるように、犯罪をした少年と触法少年以外、つまり、犯罪をやっていない少年が、家庭裁判所で、少年審判になって、保護処分(保護観察,少年院送致,児童自立支援施設等送致)になることがあるのです。(虞犯少年(ぐはんしょうねん))
少年が得する方向でばかり少年法の話をする人が多いですが、実は、少年の方が大人よりも大変な場合があるのでした。一応、少年法の理念としては、少年のためなのですが。
1項3号のイとニに「性癖」という言葉があります。「くせ」「習慣」くらいの意味です。エッチな意味は有りません。
こんなことばかり言ってると、私の人格が疑われかねませんが、このブログのターゲットがいかに広いか、私の目的がなんであるかを考えていただければ幸いです。まあ、スケベでないとは言いません テヘ
他にも、たくさん有ると思いますが、この辺でやめておきます。長くなりまして、すみません。
詳しすぎます?