2017年1月10日の投稿に、大幅に改訂を施しました。
資料
国際組織犯罪防止条約 外務省サイト。訳文PDFと説明書PDFのリンクが有ります。
2月28日時点の法案のPDF (この後、組織的犯罪集団の(意味の無い)例示が足された)
現行の組織犯罪処罰法 政府サイト。
最後に、共謀罪をもろに定める条文についてのみ、このブログの中にテキストで載せました。
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なぜ、共謀罪を創設しようとするのか?
ある条約がきっかけです。
外務省のWEBページ
条約の目的は
第一条 目的この条約の目的は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進することにある。
条約でいう「組織的な犯罪集団」ですが。
第2条(a) 「組織的な犯罪集団」とは、三人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。
マフィアや日本の暴力団などの組織犯罪を想定しています。
マネーロンダリングなどは、国をまたがってやるのが、ばれにくいのです。
あれ?テロ対策?
共謀罪って、何なの?
(2017年通常国会提出法案では 「計画した」と書かれています。)(追記)
まず、基本
そもそも、刑法では、どういうのが犯罪になっているの?
(通貨偽造及び行使等)第百四十八条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。(殺人)第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。(窃盗)第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
他に・「予備罪」「未遂罪」とかがありますね。・「共犯」(教唆犯(きょうさはん)とか幇助犯(ほうじょはん))っていうのもあります。
条文はどうなっているのでしょうか?
まず、未遂と予備
第八章 未遂罪(未遂減免)第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。(未遂罪)第四十四条 未遂を罰する場合は、各本条で定める。
第二十六章 殺人の罪(殺人)第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。第二百条 削除(予備)第二百一条 第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。(自殺関与及び同意殺人)第二百二条 (省略)(未遂罪)第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。
罪刑法定主義=犯罪とそれに対応する刑罰について、(国会で作る)法律で、あらかじめ(後からはだめ)明確に定めなければならない。
民主的に決める趣旨と、国民の自由を不当に奪わない趣旨です。
憲法31条は、刑事手続きの適正を国家に義務付けますが、刑事訴訟手続きだけでなく、何が犯罪になり、どの刑罰が適用されるか(実体的デュープロセス)まで含む趣旨と解釈されます。
ちなみに、この凶器準備集合罪も、1958年、60年安保闘争に備えて作った、やばい系の条文です。
うわべの目的は、暴力団や過激政治団体同士の抗争を取り締まるため、と。
戦後も、うそついた過去があったのね。あったのね。
共犯は総則にまとめて書いてあります。
第十一章 共犯(共同正犯)第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。(教唆)第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。2 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。(幇助)第六十二条 正犯を幇助した者は、従犯とする。2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。(従犯減軽)第六十三条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。(教唆及び幇助の処罰の制限)第六十四条 拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。(身分犯の共犯)第六十五条 (省略)
未遂、予備のポイント
法益侵害が発生した(既遂)か、重大な法益侵害の危険が大きくなったとき(未遂など)のときに、処罰する必要が有ります。
それに、犯罪は、結果が出てないと、外から見て、わからないんです。
教唆犯も、共謀に加わっただけのものも、教唆をした事実、共謀をした事実の証拠が無いと有罪にできませんよね?
これはどうやって調べるんでしょうか?
自白だけを証拠にして有罪にしてはいけません。(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)(補強法則)
アメリカでは、共犯者の自白にも補強法則が必要としていますが、日本では条文が無くて、判例は、共犯者の自白は、自白だけで証拠になるとしています。
つまり、共犯者(とされる人)(実行犯を含む)を追及すれば、チクられた人を有罪にし放題。
自分だけが有罪になるのがいやな人は、他人を道連れにし放題になります。
司法取引を定めた刑事訴訟法改正が2018年までに施行される予定です。
「司法取引」=捜査に協力すると、求刑を軽くしてもらったり、起訴を取り下げてもらったりできる。
よけいに、チクり放題になるでしょうね。
もともと、自首すると、「刑を減軽することができる」(刑法42条)のですが、
今回の法案では、共謀罪を定めるのと同じ条文に、
「実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。」と書いてあります。
つまり、自分はまったくの無傷で、計画の事実が無かったとしても、他人を告発して有罪にできちゃうのです。
そして、共謀罪
予備罪よりも前です。(今回の法案にある準備行為も予備よりも前の話です。)
今回の法案(組織犯罪処罰法 改正案)
ちなみに「テロ」(和訳など含む)とか「テロ等準備罪」という言葉は条文のどこにも有りません。 今回の改正案では、前の提案とは違う点があります。・「共謀」→「計画」
「組織的犯罪集団」
=「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」
「計画」
「二人以上で共謀した」を「二人以上で計画した」に変えました。「共謀」を「計画」に言い換えても、実質的には同じ。
なのに、なぜ変えたのか。
「準備行為」
共謀だけよりは、準備行為(表現行為)というものが見えるものが有る方が良い(アメリカの共謀罪もこういうもの)。一応ね。問題がいっぱい。
1.準備行為とは予備よりもっと前の(犯罪に使う物とかの準備よりもっと前の)資金の手配とかでも 認められる。「その他」と書いてあるから、限定が無い。
処罰するかどうかは準備行為が行われたかどうか。
3.この準備行為は、共謀した中のだれか一人が行えば、それで条件がととのっちゃいます。
何も法益侵害の危険が無い段階(=相談だけの(結果や危険を招く行為をしていない)段階)で、犯罪として取り締まったら、何でもありでしょっ。
277って多すぎでしょっ
今まで、予備も未遂も処罰が無かった多くの犯罪が該当します。
窃盗とかも入ってます。
今回の法案提出前の議論で600以上と言っていました。
第三十四条 条約の実施1 締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置を含む。)をとる。2 第五条、第六条、第八条及び第二十三条の規定に従って定められる犯罪については、各締約国の国内法において、第三条1に定める国際的な性質又は組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める。ただし、第五条の規定により組織的な犯罪集団の関与が要求される場合は、この限りでない。3 締約国は、国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うため、この条約に定める措置よりも精細な又は厳しい措置をとることができる。
1項で、、国内法の原則に従って国内法化すれば良い。(共謀罪は、日本の刑法の原則に反するというのが従来の政府見解でもある)。つまり、共謀罪を無理やり創設しなくても良い。
条約批准にあたって、ドイツ、フランスなどは共謀罪を創設してない。
参加罪があります。参加罪は共謀罪と違います。法務省は、資料を出して、ドイツもフランスもいっしょだぞと言いたいみたいですが(言ってはいません。ずるい)
国内法化するにあたって、国をまたがったものに限定するのは、支障は無くて、条約の趣旨からは望ましい。
結局、277になりました。
過失犯など共謀が有り得ない犯罪を抜いただけです。
実質、同じです!!!!
※提出予定法案にある共謀罪が設けられることになる犯罪
東京新聞政治部作成のリスト(ツイッター)
朝日新聞サイト 東京新聞サイト
テロと関係無い犯罪がすごくいっぱいあるじゃんね。
テロ等の「等」がほとんどじゃないかっ!
じゃあ、最初の案はまずかったと認めるのね。
少なくしても、テロ対策に支障は無いってことね。
「条約に反する」って言ってたのもウソだったのね
なめんなよ
減らしたからバランスとれた?公明党がブレーキ?
何も変わっていないじゃないか。
偽善者め!
さて、
共謀罪は、捜査手法とも関係します。
共謀罪は、捜査手法とも関係します。
「組織的犯罪集団」の一員でなくても、傍受し放題です。
今までと違って、窃盗の疑いも盗聴できちゃいますから。
法律なく、令状なしで、勝手にGPS発信器を車にくっつけちゃう警察さんがやることですよ?
昔より格段に性能の良い防犯カメラが大量に有って、
マイナンバーが有って、
たくさんのデータのたくわえがあって、
昔より格段に性能の良いコンピュータが有って、
大量のデータを、目的に沿って、解析してくれる。
データにアクセスさえできれば、
人間がぼけっとしてても、コンピュータまかせで、かなり細かいこと(人の外見、健康状態、発言、思想、どこにいて、何をしたか)を把握することが可能です。
なぜ、上の文中で、“一般人” “一般市民”というように、「“ ”」でくくるのかというと、そもそも、捜査機関から見て、犯罪者と一般人の区別って、いったい何よ?って話があるからです。
日本政府と政権与党のしたいことの本音は?
ところで、昔から共謀罪がいっぱい有る、アメリカやイギリスで、テロってなかったっけ?防げてた?
っつーかさ。今まで後回しにしたりできたのは何だったのだ。(条約ができてから15年以上、国会承認してから13年以上)。
しかし、条文に「テロ」という言葉はどこにも出てきません。
組織犯罪集団に限定しても、共謀罪は共謀罪です。
「計画」と書いても、共謀罪です。
準備行為(表現行為)を要件とするのは、アメリカの共謀罪と同じです。
呼び方を変える理由は、
国民をだまくらかす目的以外には考えられません。
ほとんどのメディアが共謀罪と呼ぶのに対して、一部のメディアが「テロ等準備罪」と呼びますが、国民をだます政府の共犯者です。
「国民のため」「社会のため」「世界平和のため」と言って、結局のところ、その内実は、本来、目的であるはずの人間一人一人を国家のための道具として見て、やっているということは、過去の歴史を少しでも学んだことが有る者には、バレバレなのだ。
資料--------------------------------------------
2017年通常国会提出の法案(組織犯罪処罰法改正案)の条文の中、もろ共謀罪についての条文を載せます。
第六条の次に次の一条を加える。(実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画)第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役または禁錮二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。
2月28日時点の法案のPDF (この後、組織的犯罪集団の(意味の無い)例示が足された)「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」
現行の組織犯罪処罰法 政府サイト。
国際組織犯罪防止条約 外務省サイト。訳文PDFと説明書PDFのリンクが有ります。
------------------------------------お礼を述べさせていただくとともに、紹介いたします。
以前から、共謀罪について(反対する趣旨で)取り組んで来られた方々の共著です。
この本は、わかりやすく、詳しく書いてありますが、少し難しいかもしれません。
↓ 最近のもの(今国会提出法案を踏まえている)で、詳しいものです。
↓ 2017年5月20日発売予定
岩波ブックレットなので、安くて薄いです(^▽^)/