公明党の遠山清彦衆議院議員がしている法案成立直前の説明動画についての解説も書きました。




2017年1月10日の投稿に、大幅に改訂を施しました。

資料
国際組織犯罪防止条約
 外務省サイト。訳文PDFと説明書PDFのリンクが有ります。
2月28日時点の法案のPDF (この後、組織的犯罪集団の(意味の無い)例示が足された)
現行の組織犯罪処罰法 政府サイト。
最後に、共謀罪をもろに定める条文についてのみ、このブログの中にテキストで載せました。
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なぜ、共謀罪を創設しようとするのか?


ある条約がきっかけです。

略称:国際組織犯罪防止条約
正式名称:国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約
外務省のWEBページ
英語名:Convention against Transnational Organized Crime

別名:跨国組織犯罪条約、越境組織犯罪条約
(transnationalの訳として「跨国」「越境」が良いとの意見から。internationalと違うから)。

条約の目的
第一条 目的
この条約の目的は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進することにある。

条約でいう「組織的な犯罪集団」ですが。

第2条 
(a) 「組織的な犯罪集団」とは、三人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。
 
マフィアや日本の暴力団などの組織犯罪を想定しています。
マネーロンダリングなどは、国をまたがってやるのが、ばれにくいのです。 

2000年11月15日に第55回国連総会で決議されました。
現在、187ヵ国が批准しています。(国連加盟国は193ヵ国)

日本は2003年5月に国会で批准について承認しましたが、国内法の未整備を理由に批准していません。

「この条約を締結するために、法整備(共謀罪創設)が必要」というのが、政府の言う理由でした。

今回、2017年1月、通常国会(毎年開会される定例の国会)に、内閣提出法案とする方針が、発表されました。
理由は、「2020年の東京オリンピックに向けた、テロ対策のため」だそうです。
あれ?テロ対策? 

ちなみに、テロ対策で作成された条約は、別に、13有りまして(外務省サイト「テロ防止関連諸条約について」)、日本は、13すべて締結しています。そして、この条約に即した法整備も終わっています。



それでは、共謀罪とは何か?」をおさらいしましょう。(ちょっとむずいですけど )

共謀罪って、何なの?


ざっくり言うと
「だれかとだれかが、犯罪の実行を相談すると、犯罪になる」っていうことです。
(2017年通常国会提出法案では 「計画した」と書かれています。)(追記)

善良な市民の方々は、
「犯罪の相談なんて、物騒だね。相談そのものも犯罪として取り締まって刑罰で懲らしめなきゃだめだね」
と思うでしょう。
当然でしょう。

いったい、何が問題なんでしょうね?

共謀罪っていうのは、今の日本の刑法学の体系(ドイツやフランスなどの国も同じ)からは、本来、認められないものなのです。(従来の政府見解も同じ)


まず、基本

そもそも、刑法では、どういうのが犯罪になっているの?


「殺人」「窃盗」「通貨偽造」とかおなじみですね。(なじみたくないけど(;^_^A  )


刑法

(通貨偽造及び行使等)
第百四十八条  行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2  偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
(窃盗)
第二百三十五条  他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。


他に
「予備罪」「未遂罪」とかがありますね。
「共犯」(教唆犯(きょうさはん)とか幇助犯(ほうじょはん))っていうのもあります。


「何が犯罪として法律で決まっているのか」というのに「構成要件」という言葉を使います。
(ざっくりした説明です。刑法総論で、刑法学の基礎の考え方の違いから、「構成要件」が具体的に何を意味するかは、ものすごくたくさん考え方があります。)

「殺人」「窃盗」「通貨偽造」とかを基本的構成要件といいます。
「殺人未遂」「殺人予備」「殺人教唆」「殺人幇助」は、修正された構成要件といいます。



条文はどうなっているのでしょうか?


まず、未遂予備

刑法

第一編 総則

   第八章 未遂罪

(未遂減免)
第四十三条  犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
(未遂罪)
第四十四条  未遂を罰する場合は、各本条で定める。

43条 本文(「ただし、」の手前まで)が普通の未遂犯(障害未遂)
43条 ただし書き(「ただし、~」)は、中止犯。中止犯の説明は省きます。

減軽は、「減刑」と別の意味です。
「減刑」は確定した判決で決まった刑罰を軽くすること。(恩赦の一種)(恩赦法)
「減軽」は、判決を出すときに、法定刑を軽い刑にすること。
(減軽の方法は総則 第13章 加重減軽の方法(68条~72条)。)

44条に書いてあるように、未遂犯は個別の規定があります。

たとえば、殺人罪。

第二編 罪

   第二十六章 殺人の罪

(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第二百条  削除
(予備)
第二百一条  第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
(自殺関与及び同意殺人)
第二百二条  (省略)
(未遂罪)
第二百三条  第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

201条に、199条(殺人)の場合の予備。予備罪は、予備罪で条文が有ります。
203条に、199条(殺人)の場合の未遂。199条を修正する形で条文が有りますね。。
このように、いちいち条文が無いと、既遂の場合しか処罰できません。(罪刑法定主義から)

罪刑法定主義=犯罪とそれに対応する刑罰について、(国会で作る)法律で、あらかじめ(後からはだめ)明確に定めなければならない。
民主的に決める趣旨と、国民の自由を不当に奪わない趣旨です。
憲法31条は、刑事手続きの適正を国家に義務付けますが、刑事訴訟手続きだけでなく、何が犯罪になり、どの刑罰が適用されるか(実体的デュープロセス)まで含む趣旨と解釈されます。

予備罪は、ちょっとしかなくて、未遂も少ないです。
未遂は重大な犯罪だけで、予備まであるのは、ちょー重大な犯罪だけです。

数   予備・未遂・既遂<未遂・既遂<既遂だけ
重大さ 予備・未遂・既遂>未遂・既遂>既遂だけ

基本的構成要件と直接関係無く、何かの準備をすると犯罪になるもの(凶器準備集合罪など)があります。(今回の法案の準備行為とは違います)

ちなみに、この凶器準備集合罪も、1958年、60年安保闘争に備えて作った、やばい系の条文です。
うわべの目的は、暴力団や過激政治団体同士の抗争を取り締まるため、と。
戦後も、うそついた過去があったのね。あったのね。


共犯は総則にまとめて書いてあります。

第一編 総則

   第十一章 共犯

(共同正犯)
第六十条  二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
(教唆)
第六十一条  人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
2  教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
(幇助)
第六十二条  正犯を幇助した者は、従犯とする。
2  従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
(従犯減軽)
第六十三条  従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
(教唆及び幇助の処罰の制限)
第六十四条  拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。
(身分犯の共犯)
第六十五条  (省略)

60条は、「共同正犯」 (犯罪を共同して実行した場合)いっしょに実行する人が共同正犯
61条は、「教唆犯」(きょうさはん) (他人に教えたりそそのかしたりして、犯罪実行を決意させて、その人が実行した場合)
教唆した人を教唆する場合も同じ。
62条は、「幇助犯(ほうじょはん)(従犯)」 (犯罪を自分で決意して実行する人、を助けること)
2項は、他人に、幇助犯をすることを決意させて幇助を実行させた場合。
63条は、幇助犯の刑 (実行犯の法定刑を減軽する)
64条は、軽い犯罪(拘留または科料の罪)は、教唆と幇助を、原則処罰しない、と。
65条は、その人じゃなきゃできない犯罪(収賄とか横領とか)の共犯についてです。


共犯(共同正犯を含む)も60条~65条に書いてあるから、処罰できるわけですが(罪刑法定主義)、
予備とか未遂などのように、個別の犯罪について、いちいち書くのではなくて、刑法 第一編 総則に書くだけです。
(自殺関与(自殺教唆、幇助)のような特殊なものもある)

この刑法の総則は、「刑法」という法律だけでなく、犯罪と刑罰を定めている他の法令にも適用されます。

(他の法令の罪に対する適用)
第八条  この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。


未遂、予備のポイント


既遂とは、何が違うのか、です。
既遂は、結果が出ちゃってるのです。
殺人だと、死んじゃった。(死んでないと未遂。)
放火だと、燃えちゃってて、人や財産がすごく危険。(危険が発生していないと未遂。)

内心の計画  →  準備的行為 →  実行の着手  →結果の発生
罰則なし     (あれば)予備罪  (あれば)未遂罪    既遂

法益侵害が発生した(既遂)か、重大な法益侵害の危険が大きくなったとき(未遂など)のときに、処罰する必要が有ります。

それに、犯罪は、結果が出てないと、外から見て、わからないんです。
結果が同じように出ていてもわからない場合がありますが。(例:過失致死と傷害致死と殺人)

他人をナイフで刺したとしましょう。
相手は重傷を負ったけど死ななかった。
傷害の故意しか無ければ、傷害罪。殺人の故意が有れば、殺人未遂罪。

故意が有ったか無かったかで判断するしかないんです。
自白に頼るのはまずいし、外から見ても、本気だったかどうかなんて、なかなかわからないですね。

予備罪なんて、もっとシビアです。
人を殺すためにナイフを買った。これで成立です。
(長いナイフを買って銃刀法違反は別の話)
身代金目当てに誘拐(略取)する社長さんがいる家の周辺を、社長さんをしばるロープを車に積んで下見した。これで、身の代金目的略取予備(228条の3)。

ミリオタやサバイバルオタが趣味でナイフを買ったのかもしれないし、ドライブしてただけかもしれませんよ?
なんで、そんなのわかります?

警察官が、危ないと思った人(挙動不審な人)に、職務質問して(警察官職務執行法)、「所持品を見せてね」とか言って、「何だこのナイフは?」とか、「なんでこの辺うろうろしてるの?」「なんで理由言えないの?」「あやしいな」「ちょっと、署で詳しく話を聞かせてくれない?」とか言って、連れてっちゃって、自白をせまるしかない。
たまたま会ったんじゃなくて、あやしいと思う人を尾行していたかもしれません。

無理に判断しようとすれば、権力が横暴になるしかないのです。



共犯のポイント

共犯は二つに分けて考える必要があります。

共同正犯と、教唆、幇助です。

共同正犯は、「正犯」という言葉通り、実行犯なのです。
教唆は教唆しかしていないし、幇助は、幇助の実行はしてるけど(ややこしい)、正犯のやる「犯罪の実行」はしていませんね。

共同正犯が、普通の正犯と違うのは、全部を共同実行する意思で一部しか実行していない点です。
実行してるから「正犯」なんですが、その点違うので、広い意味で「共犯」に含めています。
ああ、ややこしい。
この辺、法学部の学生でもつまづくところなので、気にしないでください。

(未遂と共犯がからむと、すごく難しい試験問題のできあがり(^▽^)/ )


共同正犯も、教唆と幇助も、基本的構成要件を修正して、拡げている点、同じですね。

共同正犯は、他の共同正犯者の存在が前提になります。
教唆、幇助は、実行犯(正犯)の存在が前提になります。
実行犯(正犯)がいない=まだ、犯罪を実行する人がいない段階で、教唆とか幇助とかを罰することはできません。


ちなみに、判例は、戦前の昔から、「共謀共同正犯」という、修正された構成要件を認めてきました。
「「共謀」に加わった者は、全部、共同正犯だ」と言うのです。
自分が実行していなくても、「共謀」すると「正犯」だというのです。
実務では、共犯事件の多くが、「共謀共同正犯」として処理されています。
この判例には批判も多いですが、認めるにしても、厳格さが要求されます。
「黒幕とかを重く処罰したいなぁ」という欲求を満たしたかったらしいのですが、どんどん広く、限定されずに認める場合が増えています。(やばいですね)

教唆犯も、共謀に加わっただけのものも、教唆をした事実共謀をした事実の証拠が無いと有罪にできませんよね?
これはどうやって調べるんでしょうか?

自白だけを証拠にして有罪にしてはいけません。(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)(補強法則)
アメリカでは、共犯者の自白にも補強法則が必要としていますが、日本では条文が無くて、判例は、共犯者の自白は、自白だけで証拠になるとしています。

つまり、共犯者(とされる人)(実行犯を含む)を追及すれば、チクられた人を有罪にし放題。
自分だけが有罪になるのがいやな人は、他人を道連れにし放題になります。


司法取引を定めた刑事訴訟法改正が2018年までに施行される予定です。
「司法取引」=捜査に協力すると、求刑を軽くしてもらったり、起訴を取り下げてもらったりできる。
よけいに、チクり放題になるでしょうね。

もともと、自首すると、「刑を減軽することができる」(刑法42条)のですが、
今回の法案では、共謀罪を定めるのと同じ条文に、
「実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。」と書いてあります。
つまり、自分はまったくの無傷で、計画の事実が無かったとしても他人を告発して有罪にできちゃうのです。



この「共謀共同正犯」の場合でも、実行犯がいないと(殺人罪なら、人が人を殺さないと)、認められません。



そして、共謀罪


共謀罪は、犯罪の相談をすると、犯罪成立です。

殺人とか詐欺とかが実行される必要はありません。

予備罪よりも前です。(今回の法案にある準備行為予備よりも前の話です。)

今回の法案(組織犯罪処罰法 改正案)

ちなみに「テロ」(和訳など含む)とか「テロ等準備罪」という言葉は条文のどこにも有りません。 今回の改正案では、前の提案とは違う点があります。
・「団体」→「組織的犯罪集団」
・「共謀」→「計画」 
・共謀だけ→共謀だけでなく、準備行為も必要。
・「法定刑が四年以上の懲役・禁錮の罪」(600以上) → 277



法務省がいろいろと「理解」を求める文章(言い訳?)が、公式WEBに書いてあって、PDFのリンクが4つ張られています。


「組織的犯罪集団」


=「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」


「組織的犯罪集団」といっても、法務大臣の答弁で有ったように「結成当時からでなくても良い」とか解釈されたら、変わらないし。

「暴力団対策法」とかが、いろいろと限定をして、暴力団として指定してたりするのとは全然違う。
(限定していても、批判はあるが)
結局は、どんな団体でもいける可能性が出てくる。(会社、福祉団体、学校、労働組合、政党、宗教団体など)

今度の「組織的犯罪集団」ですが、比較される治安維持法の「国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社」に比べれば、はるかに広い。

「計画」

「二人以上で共謀した」を「二人以上で計画した」に変えました。

「共謀」を「計画」に言い換えても、実質的には同じ。
なのに、なぜ変えたのか。

「準備行為」

 共謀だけよりは、準備行為(表現行為)というものが見えるものが有る方が良い(アメリカの共謀罪もこういうもの)。一応ね。

 法案の条文ではその計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、」と書いてあって、
問題がいっぱい。
1.準備行為とは予備よりもっと前の(犯罪に使う物とかの準備よりもっと前の)資金の手配とかでも 認められる。「その他」と書いてあるから、限定が無い
2.この準備行為が、条文の書き方(「~準備行為が行われたときは」)の常識から処罰条件とされること。
つまり、準備行為が行われなくても犯罪は成立する。
処罰するかどうかは準備行為が行われたかどうか。
3.この準備行為は、共謀した中のだれか一人が行えば、それで条件がととのっちゃいます。

何も法益侵害の危険が無い段階(=相談だけの(結果や危険を招く行為をしていない)段階)で、犯罪として取り締まったら、何でもありでしょっ。
日本の刑法学の体系が、「行為」を犯罪としているのは、そのためです。


277って多すぎでしょっ 


今まで、予備も未遂も処罰が無かった多くの犯罪が該当します。
窃盗とかも入ってます。

今回の法案提出前の議論で600以上と言っていました。
「4年以上の懲役を定める犯罪」(条約2条(b)「重大な犯罪」の基準)ということです。

国際組織犯罪に限定しないで共謀罪を創設するのは、条約34条2項の要求だと法務省は言う。

第三十四条 条約の実施
1 締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置を含む。)をとる。
2 第五条、第六条、第八条及び第二十三条の規定に従って定められる犯罪については、各締約国の国内法において、第三条1に定める国際的な性質又は組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める。ただし、第五条の規定により組織的な犯罪集団の関与が要求される場合は、この限りでない。
3 締約国は、国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うため、この条約に定める措置よりも精細な又は厳しい措置をとることができる。

しかし、法務省の言うことは、「公的記録のための解釈的注」に明確に反する。

1項で、、国内法の原則に従って国内法化すれば良い。(共謀罪は、日本の刑法の原則に反するというのが従来の政府見解でもある)。つまり、共謀罪を無理やり創設しなくても良い。
条約批准にあたって、ドイツ、フランスなどは共謀罪を創設してない。
参加罪があります。参加罪は共謀罪と違います。法務省は、資料を出して、ドイツもフランスもいっしょだぞと言いたいみたいですが(言ってはいません。ずるい)


国内法化するにあたって、国をまたがったものに限定するのは、支障は無くて、条約の趣旨からは望ましい。
そして、国内法の原則にあわないものを無理に採用しないことの根拠になる。

セントクリストファー・ネイビス(カリブ海の国)で、条約批准と同時に共謀罪を、なんの留保もつけずに、越境犯罪に限定して、創設しました。締約国会議では全然問題にされていません。

結局、277になりました。
過失犯など共謀が有り得ない犯罪を抜いただけです。
実質、同じです!!!!

※提出予定法案にある共謀罪が設けられることになる犯罪
東京新聞政治部作成のリスト(ツイッター)
朝日新聞サイト 東京新聞サイト
テロと関係無い犯罪がすごくいっぱいあるじゃんね。

テロ等の「等」がほとんどじゃないかっ!


じゃあ、最初の案はまずかったと認めるのね。
少なくしても、テロ対策に支障は無いってことね。
「条約に反する」って言ってたのもウソだったのね
なめんなよ

減らしたからバランスとれた?公明党がブレーキ?
何も変わっていないじゃないか。
偽善者め!


さて、
共謀罪は、捜査手法とも関係します。


予備罪や共犯をおさらいしたのでわかるように、予備、準備より前の共謀の時点、さらに、共謀した後準備した時点で、立件するのは、あやしいと決めつけた奴を捜査して初めてできることです。
通信傍受法(捜査機関が捜査のために盗聴できる法律)は、最近(2016年5月)、改正されて(12月1日施行)、
・薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人
(追加)→ 財産犯(窃盗、強盗、詐欺、恐喝)、殺人、傷害、傷害致死、現住建造物等放火、爆発物使用などの殺傷、逮捕・監禁、略取・誘拐、児童ポルノの提供
盗聴の数:年間数十件 → 年間数百件(専門家の予測)

・東京の通信事業者施設一か所で行い、通信業者の立会が必要→都道府県警で行うことができ、立会不要に。(この方法は3年以内に準備ができたら開始)
データを県警本部に伝送して行う。
伝送されたデータに限っては、全部聞き放題になってしまいます(憲法21条2項(通信の秘密)違反)

「組織的犯罪集団」の一員でなくても、傍受し放題です。
捜査機関は、組織的犯罪集団の一員とわかっている人と話している相手方も、組織的犯罪集団の一員かもしれないし、協力者かもしれない、と思いますしね。

今までと違って、窃盗の疑いも盗聴できちゃいますから。
そもそも、電話の盗聴とかメールやLINEの盗聴とか、聞いてみて見てみて初めて、犯罪捜査の対象になるかどうかがわかりますから。

前から今後も裁判官の発する令状(捜査関係の令状は、命令状でなく許可状)は必要ですが、よほどでなければ、許可すべきでない捜査かどうか、盗聴の場合、わからないでしょう。
他の令状も、警察などに請求されて、出されないことは滅多に無いのに。

法律なく、令状なしで、勝手にGPS発信器を車にくっつけちゃう警察さんがやることですよ?

昔より格段に性能の良い防犯カメラが大量に有って、 
マイナンバーが有って、
たくさんのデータのたくわえがあって、
昔より格段に性能の良いコンピュータが有って、
大量のデータを、目的に沿って、解析してくれる。

データにアクセスさえできれば、
人間がぼけっとしてても、コンピュータまかせで、かなり細かいこと(人の外見、健康状態、発言、思想、どこにいて、何をしたか)を把握することが可能です。 


刑法でどういうことが犯罪の対象になるかの問題が大きいのは、もちろんですが、捜査の過程で多くの“一般市民”のプライバシーが侵害される危険があるのが、共謀罪です。

なぜ、上の文中で、“一般人” “一般市民”というように、「“ ”」でくくるのかというと、そもそも、捜査機関から見て、犯罪者と一般人の区別って、いったい何よ?って話があるからです。



日本政府と政権与党のしたいことの本音は?


多くの国が、国連主導の条約を誠実に批准しています。そして法整備をしています。
人権条約も、このような人権を制限する条約もです。

日本は、人権条約の選択議定書は批准せず、国連の勧告を無視して法整備をせず、裁判でも重視されない(無視?)傾向があります。
代用監獄制度の廃止をしないとか、ヘイトスピーチを犯罪として規制する法律を作らない、秘密保護法の情報アクセスへの制限を広く認めるとか、夫婦同姓強制を改正しないとか。

「国民を守る」と言うなら、国が国民を取り締まる法律より先に、人権を守るための法律が先でしょう?

こういう「国際組織犯罪防止条約」のような国民の人権を制限する条約については、条約を批准する前に、
テロ対策という、国民に受け入れられやすい理由で、国民の不安をあおって、
積極的に立法しようとする態度、バランス感覚を見て、
なんかおかしくね?
とは思いませんか?

今もテロ対策には十分な、予備や準備段階を犯罪として取り締まる法律たくさん有るのに。

共謀、予備などで、現行法で整備されているものの数を整理

共謀罪 15  (実はちょっと有ったりする)(秘密保護法、自衛隊法など)
陰謀罪  8  (共謀罪に似てます)
予備罪 40
準備罪  9

合計 72

組織犯罪集団関連の主要犯罪については、予備段階での処罰できる体制が万全(すぎ?)です。

 テロ対策の13の条約は、ちゃんと批准してるしね。
外務省サイト、テロ防止関連諸条約について
 
ところで、昔から共謀罪がいっぱい有る、アメリカやイギリスで、テロってなかったっけ?防げてた?
 
っつーかさ。今まで後回しにしたりできたのは何だったのだ。(条約ができてから15年以上、国会承認してから13年以上)。
その間、テロが有ったら大変なのは変わらないのに、国民の反対を理由にのんきにしてたの?
前よりも要件を(言い回しだけ?)絞ったら安心、って、おかしくない?
じゃあ、やっぱり最初の法案はやばかったんじゃない?
(今回のならやばくない、とは言いません)

イギリスアメリカがこの条約に合わせて何か国内法を整備したか?というとしてません。
もともと共謀罪が有るからでしょうか?

共謀罪が無い(体系上無理)、ドイツフランスがこの条約に合わせて何か国内法を整備したか?というとしてません!!(参加罪という、ちょっと似てるけど、全然違うものはあります)

なぜ、日本だけ?


「共謀罪」か「テロ等準備罪」か

首相「これを『共謀罪』と呼ぶのは全くの誤りだ」国会の答弁で言いました。
組織犯罪集団に限定して、準備行為がある場合に限定するからだそうです。
名前も「テロ等準備罪」にするということでした。
しかし、条文に「テロ」という言葉はどこにも出てきません。 
対象犯罪の大多数はテロと無関係です。

組織犯罪集団に限定しても、共謀罪は共謀罪です。
「計画」と書いても、共謀罪です。
準備行為(表現行為)を要件とするのは、アメリカの共謀罪と同じです。
どうして、共謀罪と呼ぶのが誤り(まちがい)なのか、全然わかりません。

呼び方を変える理由は、
国民をだまくらかす目的以外には考えられません。

ほとんどのメディアが共謀罪と呼ぶのに対して、一部のメディアが「テロ等準備罪」と呼びますが、国民をだます政府の共犯者です。

「国民のため」「社会のため」「世界平和のため」と言って、結局のところ、その内実は、本来、目的であるはずの人間一人一人を国家のための道具として見て、やっているということは、過去の歴史を少しでも学んだことが有る者には、バレバレなのだ。


資料--------------------------------------------

2017年通常国会提出の法案(組織犯罪処罰法改正案)の条文の中、もろ共謀罪についての条文を載せます。

第六条の次に次の一条を加える。

(実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画)

第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役または禁錮

二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮

2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。


2月28日時点の法案のPDF (この後、組織的犯罪集団の(意味の無い)例示が足された)「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」
現行の組織犯罪処罰法 政府サイト。

国際組織犯罪防止条約 外務省サイト。訳文PDFと説明書PDFのリンクが有ります。 

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なお、今回、共謀罪の背景、国際組織犯罪防止条約についてなど、下の本を参考にさせていただいたことが多く有りました。
お礼を述べさせていただくとともに、紹介いたします。
以前から、共謀罪について(反対する趣旨で)取り組んで来られた方々の共著です。

この本は、わかりやすく、詳しく書いてありますが、少し難しいかもしれません。




↓ 最近のもの(今国会提出法案を踏まえている)で、詳しいものです。



↓ 2017年5月20日発売予定
岩波ブックレットなので、安くて薄いです(^▽^)/