怒る関経連「なぜ一地裁の裁判官が」 高浜原発差し止め:朝日新聞デジタル


仮処分のニュースです。
最近、原子力発電所の再稼働のからみで、仮処分のことが、よく話題になっていますね。 

でも、そもそも、仮処分、って、なんでしょうか?
関経連の人も、関経連の人を批判する人も、正確に理解していますでしょうか?

民事保全法に出てくる言葉です。

初めて聞きますか?

民事保全法とはどういう法律か。

第一条に書いてあります。

(趣旨)
第一条  民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

難しい言葉がいっぱい出てきましたね。
説明しますので、安心してくださいませ(下の説明は、全部、民事訴訟法の言葉として説明します。刑事訴訟法の説明ではない、ということです。)

民事訴訟の本案=民事訴訟で、原告(訴えを起こした人)が、こういう判決をもらいたい、という内容のこと

この本案についての判決が、本案判決

原告の請求が認められた判決なら、認容判決
原告の請求が認められない判決なら、棄却判決
他に、一部認容・一部棄却判決もあります。

判決=3つある(判決、決定、命令)裁判(裁判所や裁判官が行う拘束力のある判定)のうちの一つで、本案判決訴訟判決があります。
判決は、裁判所が出します。

この場合の裁判は、憲法の「裁判を受ける権利」とかの、訴訟全体の意味ではなくて、一定の手続きの後、裁判所や裁判官が出す、裁定のことです。
この場合の裁判所は、建物や組織のことではなくて、裁判をやるときに座ってる、3人だったり1人だったりの合議体(話し合って決めちゃう人たち)のことです(訴訟法上の裁判所)

民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための」というのは、つまり、最終的には、本案判決が、認容だったり、棄却だったりで出るにしても、本案判決が出る前に、権利を争っていることが変更されてしまって、取返しがつかなくなっちゃうのを防ぐために、ちょっと待て、そのままにしとけ、というのが目的。

1条には、仮差押えと2種類の仮処分が出てきますね。
原発再稼働を待て、っていうのは、仮の地位を定める仮処分ですね。

原子力発電所の差し止め請求の場合、結局、再稼働の差し止めが認められるかもしれないし、認められないかもしれない。
でも、今、再稼働しちゃったら、原告が、差し止め請求をした意味が無くなっちゃうかも、と、だから、とりあえず、再稼働を止めさせましょう、っていう話になります。


(仮処分命令の必要性等)
第二十三条  係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2  仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3  第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。
4  第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
(仮処分の方法)
第二十四条  裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分その他の必要な処分をすることができる。

23条に書いてあるように、仮処分は、裁判の3つの形式のうち、「命令」で出されます。
命令は、裁判官一人が出します。(合議体としての裁判所ではありません。判決と決定は裁判所が出す)

そして、

(申立て及び疎明)
第十三条  保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。
2  保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。


さすがに、これを原告がしないと、訴えを起こしただけでは、仮処分命令は出ません。
早い話、仮処分の命令を出してもらわないと、えらいことだ、っていうことを言うわけです。
疎明をしなければいけません。

疎明っていうのは、「そめい」と読みます。
証明は、ちゃんとがっつり証拠を出して、裁判所とか裁判官がそりゃ確かにそうだ、と思うところまで、もっていかないといけないんです。
でも、疎明は、裁判所や裁判官が、確からしい、っていうところまで、持っていけばよい、っていうことです。

あくまでも、なので。

被告の側や、関係者は、とりあえず、仮でも、動かせないと頭に来ちゃうのはわかりますが、負けたわけではないのです。
そして、原告も、勝ったわけではないのです。

そして、仮処分命令は、異議申し立てができちゃいます。

(保全異議の申立て)
第二十六条  保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。
(保全執行の停止の裁判等)
第二十七条  保全異議の申立てがあった場合において、保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において第三項の規定による裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全執行の停止又は既にした執行処分の取消しを命ずることができる。
2  抗告裁判所が保全命令を発した場合において、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、前項の規定による裁判をすることができる。
3  裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、既にした第一項の規定による裁判を取り消し、変更し、又は認可しなければならない。
4  第一項及び前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
5  第十五条の規定は、第一項の規定による裁判について準用する。

今度は逆に、保全命令が執行されると、(原発の場合は、再稼働が差し止められると)、取返しがつかないかもだから、取り消してね、と、疎明するわけです。

取り消されると、原発は再稼働しても、国におこらんなくなります。





一応、ここまで、仮処分命令、って、どんなもんか、について、見てきたわけです。

朝日新聞の記事には

「角副会長は17日、関経連の記者会見で「憤りを超えて怒りを覚えます」と切り出した。「なぜ一地裁の裁判官によって、(原発を活用する)国のエネルギー政策に支障をきたすことが起こるのか」と述べ、「こういうことができないよう、速やかな法改正をのぞむ」と訴えた。」 

とあります。

角さんは、阪急電鉄の会長さんだそうなので、電気代が少しでも安い方が良いので、愚痴を言いたくなるのはわ
かります。
でも、裁判所の制度について、理解が不足しているように思います。

一応、言いますと、地方裁判所だろうが、なんだろうが、国の司法機関です。
 
地方裁判所は国の機関です。都道府県の機関ではないですよ(^o^) : ドン もっとん del 八王子 の つれづれブログ - 憲法、人権、法律をメインに -

司法権を行使できるのです。
甘く見ちゃだめです。

そして、司法権というのは、あくまでも、合憲の法律などの法源をもとに、法がなんであるかを解釈して、適用する権限なのです。
司法機関は、政策判断をしませんし、させてもいけません(たまにしてるかも)。 
むしろ、法に合わないものだと、行政をストップさせる役割が、司法だとさえ言えるのです。
国だけでなく、関西電力にもストップをかけていますが。
それだけ、司法権っていうのは、ものすごく大きな権力なのです。
モンテスキューが「おそろしい」と大騒ぎしただけのことはあります。

だから、見当違いの批判です。
日本を代表する鉄道会社の経営に携わる人が、こんなんじゃだめです。
もちろん、仮処分命令自体が不当だ、っていうことを言うのなら、筋は通ります。 

上の話がよくわからない人は、この投稿を読んでください。三権分立って、何だか本当に知ってる? : ドン もっとん del 八王子 の つれづれブログ - 憲法、人権、法律をメインに -



ところで、何気に、途中で、いろいろな用語説明を入れました。

マスコミによって、表現が少しずつ違うんですが、どうも誤解しているんじゃないか。これを読んだり聞いたりしてる一般国民も誤解してるんじゃないか、って思うことがたくさんあるのです。

たとえば
「判決を」「裁判長が」「言い渡した」。これは合ってます。
一人の裁判官で裁判した場合は、「判決を」「裁判官が」「言い渡した」、となります。

でも、
「判決を」「裁判長が」「出しました」は、間違いです。
「判決を」「裁判所が」「出しました」が、正解です。

裁判長は、訴訟指揮を中心にやる人で、判決の言い渡しをする人なんですが、 
合議体である裁判所が、話し合って、判決を作るんです。法律上は。
最高裁は別として、1人でなければ、3人です。
二人が同じ意見だと、それが判決になっちゃいます。

おそろしい数の裁判に対して、 ちょびっとしか裁判官がいないので、裁判官はものすごく忙しいです。
だから、裁判長でないもう一人の裁判官のうち一人が、一つの事件の担当に決まっていて、 判決の下書きを書いて、裁判長がOKすれば、終わり。
裁判長がごねたら、書き直し。
書き直してもだめなら、3人で話し合い。(めったにない)
という感じらしいです。 

らしい、と書きましたが、情報源は確かです。

民事の裁判官を長年務めた、元高等裁判所判事から、もっとんが、生で聞いた話なので。 


それから、マスコミではなく、ブログなどで、 仮処分について、「判決」だの「決定」だの言ってるのがあります。
命令だってば。 意味が違うんだってば。
判決は、明らかに間違い。「決定」は、法律の意味とは違う意味で使ってるかもしれないけど、法律の知識が少しでもあれば、「決定」っていう言葉を使うのは、まずい場面だとわかるはず。


もっとんは、原告が、どういう法律の理論構成で、請求をしたのかは、よく知りません。
それから、原発を差し止めた方が良いかどうかの、政策判断は、とりあえず、ここでは書きません。
ちなみに、もっとんは、小学生のときから、原子力発電所は危ないからやめたほうが良い、と言っていましたが。 
もちろん、そのあとも、少しずつ、危ない理由を多く知ることになりますが。 

法的な話をもう少し掘り下げてみましょう。


話題の憲法改正の話です。

自民党の改正案にもあって、与党の公明党も、野党の民主党も、賛成しているらしい、環境権の話です。
(自民党の案の環境権は、おそろしく奇妙な条文ですが)
環境権は、社会権に分類される人権ですので、共産党も反対はしないと思います。
(共産党は、わけわかんないから、断言できませんが)

環境権が、憲法に定められて、確定するとどうなるか。
国民が、まっとうな生活をするのにふさわしい環境を整える義務が、国に発生します。(またはあることが明確になる)
そして、 そのような環境を破壊する国民の行為を止める義務が、国に有ることになります。

そうすると、原子力発電所が有ると(稼働すると)、環境権が侵害されるという理屈で、国の行為が憲法違反になる可能性があります。

自民党の草案を作ったのは、あほだから、ノリで作っただけだから、他の国の憲法で環境権がはやりだから書いちゃったのね。
おそろしく変な書き方については、またの機会に書きます。